2018年11月27日、「外国人材受け入れ拡大法案」が衆院法務委員会で可決された。
これまで、来年の2019年に向けての新たな在留資格を設ける出入国管理法の改正案が出ていたが、この度、衆議院法務委員会で採決が行われ、野党の反対を押し切る形で自民・公明両党などの賛成多数で可決された。
これにより、2019年4月から外国人材の受け入れが拡大する。
積極的に外国人材を受け入れている企業などにも注目が集まる事が予想され、外国人材受け入れ拡大法案関連銘柄としてしっかりとチェックしておきたい。
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外国人材受け入れ拡大法案に注目
外国人材受け入れ拡大法案とは
その名の通り、外国人労働者の受け入れを拡大しようという法案である。
改正案の内容としては、政府が指定した業種で一定の能力が認められる外国人労働者に対し、新たな在留資格「特定技能1号」「2号」を付与するというもの。
これにより、企業側もイメージ的に外国人労働者を受け入れやすくなるとともに、外国人労働者も引け目なくのびのびと働くことができる。
外国労働者増加の背景
厚生労働省が発表した「外国人雇用状況」の届出状況まとめによれば、その数は年々増加しているという。
届け出義務化以降初めての統計をみてみると、この8年で外国人労働者を採用する事業者は2.3倍、実際の外国人労働者も2.3倍と増えており、外国人労働者の採用数自体の増加とともに外国人労働者を採用する事業所数も増えているのがよくわかる。
これには、政府や企業が、卒業後も日本へ留まる留学生の就労支援を行ったり、高度外国人材の受け入れを増やしたりしていることが要因とされており、資格外活動許可でアルバイトをする留学生なども含まれている。
こういった背景からも、今回の「外国人材受け入れ拡大法案」の可決へとつながっている。
どのような事業所が外国人を採用しているのか
超少子高齢化社会が進んでいる日本では、問題の一つとして労働人口の減少が挙げられている。
結果、その対策として外国人労働者の採用するという必然的な流れが生まれているといっていい。
外国人労働者を採用している事務所を産業別に見てみよう。
産業別外国人採用状況
製造業 | 卸売業・小売業 | 宿泊業・飲食サービス業 | その他 |
23.5% | 16.3% | 14.3% | 45.9% |
やはり、工場などで手や体を動かす製造業での採用が多くみられる。
しかし、前年と比べると製造業で働く外国人労働者の割合は減少しており、建設業で働く外国人労働者の割合が増加していることから、昔の外国人労働者を受け売れるイメージは少しずつ変わってきているようだ。
外国人材受け入れ拡大法案関連銘柄が動く!?
外国人材受け入れ拡大法案が株式市場に与える影響
外国人材受け入れ拡大法案が可決されたことで、これまで積極的に外国人労働者を採用してきた企業に注目が集まるだろう。
併せて、新たに受け入れ態勢を整える企業も出てくるものと思われる。
これらの企業が、多くの外国人労働者を採用し、大きく業績アップにつながることで決算時に株価上昇も見込めることから、外国人材受け入れ拡大法案は株式市場にも大きな影響を与えるといっていい。
また、業績アップが見込みやすい点でも、株価急落のリスクを抑えやすい事に繋がり、関連銘柄は魅力対象となる。
他にも、海外進出を視野に入れた企業運営も考えられる。
外国人労働者を受け入れれば、母国語と日本語の両方を使うことができるバイリンガル、マルチリンガルの人材が育つのと同じことになり、これを目的とした海外進出を視野に入れて企業もあるだろう。
低位株の成長企業が外国人労働者を多く受け入れた場合は必ずチェックをしておきたい。
また、外国人採用サービスを運営・展開する企業にも注目だ。
さらに応募やアクセスが集中するものと思われ、運営企業の業績アップは著しいものとなると思われる。
一応考えておきたいマイナス要因
外国人を採用することで起こる問題ももちろんある。
外国人労働者を採用する企業が増えている一方で、実際の現場では様々な問題が起きているのも事実だ。
- 日本人と外国人の意思疎通が取りづらい
- 文化の違いからすれ違いが起きる
- ビザトラブル
上記のような問題から、大きなニュースになる事はあまりないとは思うが、万が一何か大きな問題が起きた場合のイメージダウンによる急落も考えられる。
「ただ外国人労働者を受け入れている」、というだけではなく、その体制がしっかり整った企業にこそ、関連銘柄の価値があると思って良いだろう。
外国人材受け入れ拡大法案関連銘柄 一覧
コード | 企業名 | 企業情報・業務内容 | 注目度 |
2168 | パソナグループ | 日本国内で働きたい外国人向けの求人サイト「パソナグローバル」を運営。 | ★★★ |
2181 | パーソルホールディングス | 人材派遣大手。同社運営の「doda」や「テンプスタッフ」では外国人の求人カテゴリーあり。 | ★★★★ |
2371 | カカクコム | 求人情報の一括検索サイト「求人ボックス」を運営。外国人材の案件も多数あり。 | ★★★ |
2379 | ディップ | アルバイトサイト大手。外国人歓迎の仕事に特化したアルバイト求人サイト「ハローバイトル」を運営。 | ★★★ |
2415 | ヒューマンホールディングス | 人材派遣や介護など。外国人バイリンガルIT人材の国内派遣をおこなっている。 | ★★★ |
4755 | 楽天 | 国内最大のECモールを運営。社内での公用語を英語にし、外国人エンジニアを通年採用へ。 | ★★★★★ |
6752 | パナソニック | 総合電機大手。日本国内の外国人社員数は300人を超える。 | ★★★★★ |
7203 | トヨタ自動車 | 日本が誇る大手自動車メーカー。外国人雇用を積極的におこなう。 | ★★★★ |
8267 | イオン | 国内流通大手。2020年度には日本本社の日本人と外国人の比率を50/50にする計画。 | ★★★★ |
9983 | ファーストリテイリング | ユニクロを世界展開。海外支店を持つことからも積極的に外国人を雇用。 | ★★★★★ |
主な外国人材受け入れ拡大法案関連銘柄はこの通りとなっている。
出遅れとして出てきた銘柄があれば、随時更新していくのでこまめにチェック頂きたい。
株師孔明注目の外国人材受け入れ拡大法案関連銘柄
これから注目のテーマ株となりうる外国人材受け入れ拡大法案関連銘柄。
その中でもとくに注目しておきたい企業を紹介していこう。
<6752>パナソニック
市場名 | 東証1部、名証1部 |
業種 | 電気機器 |
上場年月日 | 1949年5月 |
単元 | 100株 |
比較されやすい銘柄 | ソニー 、シャープ 、日立 |
株主優待 | なし |
総合電機大手。デジタル家電から車載機器や住設機器に軸足を移行しているパナソニック。
同社は2011年度の新卒採用のうち、約8割に当たる1,100人の外国人を雇用した実績があり、現在パナソニックの日本国内の外国人社員数は300人を超えていると言われている。
その後もグローバル採用とした海外現地での法人採用も年3回行っており、未だ外国人の採用には積極的だ。
また、2016年4月には「グローバル人事部」を本社に新設し、国内外の経営幹部・管理職の評価を世界統一していくという新たな動きも見せている。
現時点でサポート体制も万全であることから、外国人材受け入れ拡大法案関連銘柄としては安定の銘柄と言えるだろう。
<9983>ファーストリテイリング
市場名 | 東証1部 |
業種 | 小売業 |
上場年月日 | 1994年7月14日 |
単元 | 100株 |
比較されやすい銘柄 | しまむら 、良品計画 、Uアローズ |
株主優待 | なし |
ユニクロを世界展開しているファーストリテイリング。
同社は2010年に「公用語を英語にする」との正式発表を行っており、海外進出を常に意識していると言っていい企業だ。
その同社が展開するユニクロでは、中国、韓国、欧米に海外支店を持つことからも、2012年に新卒の約8割に当たる1,050人の外国人を雇用している。
これらの外国人社員は国内のユニクロ店舗で店長として経験を積んだあと、海外でも店長の経験をさせるというもので、海外進出に向けた取り組みとなっている。
外国人材受け入れ拡大法案関連銘柄としては今後も成長が見込める銘柄だと言えるだろう。
<8267>イオン
市場名 | 東証1部 |
業種 | 小売業 |
上場年月日 | 1974年9月 |
単元 | 100株 |
比較されやすい銘柄 | セブン&アイ 、ユニファミマ 、ローソン |
株主優待 | 株主優待カード(イオンオーナーズカード)特典(年2回) |
国内流通大手でGMS(総合スーパー)、モール型SC等を展開しているイオン。
アジア展開の強化を図っている同社は、2020年度には日本本社の日本人と外国人の比率を50/50にし、世界で活躍できるグローバル人材を1,500人に引き上げる模様。
東京オリンピックや大阪万博、インバウンドなどで今後日本に外国人が訪れる機会は飛躍的に増えるであろうことから、幅広い外国人客にも対応ができる事で収益アップにつながるものと思われる。
こういった背景からも外国人材受け入れ拡大法案関連銘柄として注目されている銘柄だ。
<4755>楽天
市場名 | 東証1部 |
業種 | サービス業 |
上場年月日 | 2000年4月19日 |
単元 | 100株 |
比較されやすい銘柄 | ヤフー 、NTTドコモ 、KDDI |
株主優待 | 保有数に合わせた楽天市場 クーポン |
国内最大のECモールを運営。銀行や証券、クレジットカードなどの金融サービスも手掛ける。
2010年より社内での公用語が英語となり話題となった同社は、2014年に80人以上の外国人エンジニアを採用した実績を持つ。
世界進出を計画する上でのダイバーシティ経営から、エンジニア職の採用も新卒一括採用から通年採用へと変わっているようだ。
その取り組みからも、今後も外国人労働者の採用は進んでいくものと思われ、関連銘柄としても期待の一角だ。
<7203>トヨタ自動車
市場名 | 東証1部、名証1部 |
業種 | 輸送用機器 |
上場年月日 | 1949年5月 |
単元 | 100株 |
比較されやすい銘柄 | ホンダ 、日産自 、デンソー |
株主優待 | なし |
日本が誇る大手自動車メーカー。
同社は、将来的に世界各地の生産拠点の幹部候補となる人材を育てることを計画しており、その一端として日本での外国人雇用を積極的におこなっている。
2013年時点では565人の外国人が働いており、外国人技能実習制度を活用した300人規模の外国人研修も行っている。
外国人材受け入れ拡大法案関連銘柄として今後さらに期待が持てる銘柄だと言えるだろう。
<2181>パーソルホールディングス
市場名 | 東証1部 |
業種 | サービス業 |
上場年月日 | 2008年10月1日 |
単元 | 100株 |
比較されやすい銘柄 | パソナG 、キャリアデザ 、リクルート |
株主優待 | なし |
人材派遣大手で、2008年10月1日に テンプスタッフ(現・パーソルテンプスタッフ)の株式移転により、持株会社として設立された。
同社は、人材派遣サイト「テンプスタッフ」や、転職サイト「duda」、求人サイト「an」などを運営しており、どのサイトでも外国人向け専用のカテゴリーやページを設けている。
外国人材受け入れ拡大法案の可決により、これらのアクセスはさらに活発化すると思われ、業績アップに期待が持てる。
外国人材受け入れ拡大法案関連銘柄 まとめ
突如可決された外国人材受け入れ拡大法案は、まだ多方面から賛否両論の声があがっている。
しかしながら、事実2019年4月より受け入れ拡大は実施され、これによる株式市場への影響も顕著に表れるだろう。
今後さらなる外国人労働者の受け入れ体勢を整える企業が現れた際には資金流入も考えられるため、新たな関連銘柄の把握は充分にしておくのがいいだろう。